SoundCloudに転職した
Cookpad(イギリス支社)を6月に退職し、7月からベルリンに移りSoundCloudで働いている。
日本を離れてから3年が経つ。何かしらの形で情報発信しないと日本での人間関係が文字通りゼロになってしまいそうなので近況を綴ることにした。ついでに、誰かの参考になれば尚嬉しい。
誰?
2014年にCookpad入社。直後からiOS Tech Leadとして海外事業の立ち上げに従事し、2017年からは海外事業の拠点であるイギリスに出向。2019年7月にドイツに移りSoundCloud入社、現在に至る。『Swift実践入門』の著者の一人。
前職のことについてあまり言及しないが、端的に言うと素晴らしい職場だった。優秀なメンバーと刺激的なプロジェクトから多くを学んだ。こうして新しい挑戦ができるのも前職で成長する機会に恵まれたからに他ならない。日本・海外共に積極採用しているはずなので興味があれば応募してみてほしい。
応募〜面接
今年の2月、ルーマニアで行われたMobOSというカンファレンスで登壇した際、同じく登壇者であった現同僚と知り合う。iOSエンジニアを採用しているというので応募してみることにした。選考プロセスに特段変わったことはなく以下のような流れ。ちなみに、リファラル扱いであったことを後々知らされた。
- 履歴書を送る
- リクルーターと電話で面談
- コーディング課題
- マネージャとビデオチャットで面談
- オンサイト(約5時間)
詳しい転職の動機を書こうとしたが、犬も食わないような内容になってしまったので、諦めて全部削ることにした。手短に言うと、漠然とした不安、計画的偶発性、長年の音楽への情熱が織り交ざった何かだった。
オファー
応募から1ヶ月強ほどでオファーの連絡を受ける。条件がやや期待を下回ったため電話で2度交渉する。最終的に1ランク上のポジションとプラス10000ユーロの年俸で契約する。海外での転職となるとオファーをもらえた時点で安堵してしまいそうだが、国も母語も違う人間をフェアに判断するのは相当難しいはずで、こちらからも根気よく情報を与える必要がある。給与交渉はちゃんとしましょう。
ビザ
EUにはブルーカードというのがあり、いわゆる「高資格外国人労働者」に発給される滞在許可証である。ドイツ語能力が要求されず、最長4年の滞在許可、さらに2-3年で定住許可(無期限)に切り替えることができるという随分寛大なものである。学歴、年収、職種などに条件はあるが、自分と同じような「Web系」エンジニアの大半が満たせる内容である。大学での専攻が美学だったので、何かトラブルになるのではと肝を冷やしたが特に言及されなかった。ただし、大卒は必須の模様。大学は卒業しておきましょう。
現職はリロケーションのためにエージェントを手配してくれるので、言われたとおりに書類をやりとりするだけで手続きが完了した。自分はイギリスから日本人としての書類を準備する必要があったのでやや面倒だったが、これはほとんどの読者に当てはまらないので割愛する。
英語
ドイツの会社だが業務は100%英語なので、ドイツ語が必要なことはない。そもそも、英語ネイティブ話者の割合が高い。
「英語はメンタル」みたいな言説を時折見かけるのだがあまり信用しないほうがいい。日本で生まれ育った日本人の英語能力は絶望的である。英語で働くつもりであれば早い段階で英語環境に身を置いて苦労したほうがいいわけだが、その点で自分が選択した「日系企業の海外出向」は数少ない正解の一つだったと思う。
日本から立ち上げメンバーとして赴任し、人が増えるに従って自動的にマネージャー的な役割も付いてくる。当然、下手な英語でマネジメントをするのはかなり無理があり、最初の1年は更迭されるのではないかと毎日ビクビクしていた。今となっては、英語でボコボコにしてくれた同僚には感謝しかない。
多くの場合、環境に適応できなければ本国に戻ることが可能で、なんらかの生活面のサポートがあるので、低リスクで海外生活をスタートすることができる。1-2年耐えれば英語が通じる国であればどこでもなんとかなるようになる。
仕事
技術スタックとしては、自分が目にした限り以下のような感じ。役割の重複したものは、移行中のものである。
- iOS: Swift, Objective-C
- Android: Kotlin, Java
- Web: ほぼScala、たまにGoとRuby
- CI/CD: GoCD, Buddybuild(iOS), Jenkins(Android)
- ストレージ: MySQL, Cassandra, Memcached, BigQuery, Hadoop
- データパイプライン: Kafka, Airflow, Spark
- インフラ: オンプレ, AWS, GCP, Kubernetes, Terraform, Chef
- 監視: Zipkin, Prometheus, Grafana
- コミュニケーション: Slack, G Suite, GitHub
明るくない分野もあるが、誤解を恐れずに言うと、割とモダンな分散システムだと思う。
まともなオファーが欲しかったので経験が活かせるiOSエンジニアとして入社したが、中期的にはバックエンドないしはフルスタック的なポジションにつきたい。幸いマイクロサービス化が進んでおり、自分の部署が担当しているそれぞれのサービスはシンプルで手をいれやすい。そこそこまともなドキュメントがあって、権限管理が緩いので時間があれば人の手を煩わさずに無限にあちこち見て回ることができる。結局、今ではモバイルをやりながら、APIの実装、ジョブのスケジューリング、デプロイ、オンコールなどなんでもやっている。
組織が大きくなると、エキスパートのほうがマネジメントしやすいとは思う。ただ、自分のキャリアの中で、問題が局所最適化されすぎて辛くなる思いを何度かしたので、今回はゼネラリスト的な振る舞いをしてみようと思う。
数年前に大きなレイオフがあったので気になっていたが、今のところ社内の雰囲気は良い。入社して半年が経とうとしているが、総じてポジティブな印象を持っている。ちなみに、グループウェア上での従業員数は400人強、日本人は自分だけの様子。
ベルリン
インターネット上で、ベルリンは移住先として人気のような印象を受けるが、個人的には以下のような理由であまり同意できない。
- 街が汚い、特に東側
- 英語は通じるが、ドイツ語ができないと不便
- サービスが悪い
- 外国人の流入のため地価が高騰している
- 同様の理由で、病院、保育園などの確保が困難
幸い自分はまともな給料をもらっていて、会社からリローケーション・翻訳等のサポートがあり、そもそも数年の海外生活経験があるが、それでも最初はかなりストレスを感じた。ましてや特に職歴がなく英語もドイツ語もままならない人には結構厳しい土地ではないだろうか。
辛辣なことを書いたが、過激なパーティーカルチャー、アーティストコミュニティーなどは確かに存在するし、そうしたものを求める人には適した場所だろう。治安もかなり悪いということはなく、社会保障も充実している。この無秩序さとある程度の平和さが同居しているのは日本人からすると不思議でならない。
これから
向こう2-3年くらいはこの会社で真剣に働くつもりだが、その後はよく分からない。ただ、今の環境には結構満足していて、一従業員としてこれ以上を望むのは難しい気がしている。そうなると新たに挑戦できるものとして候補に挙がるのは必然的に次のようなものになってくる。
- 起業
- 会社役員
- フリーランス
とはいえ、今は特にアイデアや人脈があるわけではないので面白い話があれば教えて欲しい。自分は海外に強いこだわりを持っている訳ではないので、良い話があれば日本に帰ってもいいと思っている。
逆に、海外での就職、移住や英語学習等で何かこちらから話ができることがあればDM等で気軽に応えたいと思う。先の見えない時代、お互いに助け合いましょう。それでは。